家賃滞納者を退去させる方法。強制退去の手順と費用を解説。
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記事監修者 : 茨木あさひ法律事務所
代表弁護士谷井 光
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弁護士登録後、都内の総合法律事務所で経験を積み、茨木あさひ法律事務所を創業。相続、交通事故、労働問題が得意分野。趣味は、ゴルフ、サウナ。立命館大学経営学部卒業、神戸大学法科大学院修了。
保有資格
・弁護士(大阪弁護士会所属:登録番号62348)
・宅地建物取引士
不動産の賃貸でもっとも多いトラブルが、「家賃滞納の問題」です。
家賃の滞納が溜まりだすと家賃支払の督促を行っても支払がされないケースが多いです。
そのような時は、「最短で家賃滞納者を退去させ、新しい入居者を一刻も早く募集する」ことが大切です。
今回のコラムでは、家賃滞納者を強制退去させる方法とその費用を解説します。
家賃滞納者を強制退去させる方法(概要)
まず前提として、賃貸借契約が継続した状態では、貸主は借主に退去を求めることができません。
退去を求めるためには、まず①賃貸借契約を解除する必要があります。
解除した上で借主に対して建物を明渡すように求めるのですが、借主が任意で明渡さない場合、今度は②建物明渡しの訴訟を提起することになります。
そして、訴訟で建物明渡しの請求を認める判決を獲得した場合、多くの借主は建物から退去するのですが、一部借主はそれでも退去をしません。その場合は、③強制執行により、借主を強制的に退去させることになります。
このように、家賃滞納者を追い出すためには、①→②→③のステップを踏む必要があります。
以下では、各ステップの具体的な方法について、解説していきます。
※なお、いくら悪質な家賃滞納者であろうと、①→②→③のステップを無視して無断で部屋の中に入り、中の物を外に出したり処分したりすることは絶対にダメです。
これらを行ってしまうと、住居侵入罪や器物損壊罪といった刑事罰に問われるリスク、自力救済の禁止に反してしまい貸主が損害賠償を求められるリスクがあります。
①賃貸借契約の解除
家賃滞納を理由に賃貸借契約を解除するには、原則として、「催告による解除」(民法第541条)という方法を採ります。
これは、家賃滞納者に対して、相当期間を定めて滞納分を支払うように催告し、その期間内に支払いがされない場合に契約を解除するものです。
この催告は、通常は内容証明郵便で行います。内容証明郵便とは、「いつ、誰に、どんな内容」の文書が送付されたのかを日本郵便が証明してくれるものです。
内容証明郵便で送らなかった場合、後の建物明渡しの訴訟で、家賃滞納者が「家主から家賃の催告など受けたことがない」と反論されてしまったとき、契約の解除が認められない可能性があります。
以上が、契約の解除の原則的な方法となります。
一方、契約内容として、賃料不払いがあった場合に貸主が催告をせずに解除ができる合意をしていた場合、催告をせずに解除ができる場合(いわゆる無催告解除)があります。そのため、契約を解除する場合、一度賃貸借契約書を確認してみることをお勧めします。
②建物明渡しの訴訟
ステップ①で契約を解除したにもかかわらず、借主が立ち退かない場合、今度は建物明渡しの訴訟を提起することになります。
任意に退去しない借主を強制的に退去させるためには、ステップ③の強制執行を行う必要があります。
しかし、その強制執行を行うためには、債務名義が必要になります。
債務名義とは、平たく言うと、権利を強制的に実現してもよいことを裁判所が許可した文書となります。建物明渡し請求との関係でいえば、「貸主が借主を強制的に退去させてもよい」と裁判所からのお墨付きをもらうことになります。
そして、このお墨付き(債務名義)を裁判所からもらうためには、建物明渡しの訴訟で、借主に勝つ必要があります。このお墨付き(債務名義)を獲得するために、訴訟を提起するのです。
この訴訟を起こすためには、訴状の他、不動産登記謄本や固定資産評価額証明書、ステップ①で送付した内容証明郵便などを裁判所に提出する必要があります。
③強制執行による強制退去
建物明渡しの請求を認める判決が出た場合、たいていの借主は退去に応じます。しかし、訴訟で負けたにもかかわらず、退去を行わない借主は一定数存在します。
このような任意に退去を行わない借主に対しては、最終手段として強制執行により追い出すことになります。強制執行による強制退去の方法は、建物所在地を管轄する地方裁判所に強制執行の申立てを行います。
この際、費用として予納金を約3~4万円(借主の人数や各地方裁判所の規定により増減します)支払う必要があります。
実際に強制執行を行うのは執行官という裁判所の職員です。
予納金を支払った後、執行官や立会人等の関係者と強制執行を行う部屋に訪問し、明渡し期限と強制執行日時を記載した書面を部屋に張り付けます。これを明渡しの催告(民事執行法第168条の2)と言い、借主に対する最終通告となります。
そして、借主が最終的に退去せず、強制執行に日時になった場合、執行官や鍵業者らが強制執行の現場に出向き、開錠して部屋から荷物を強制的に運び出し、明渡し完了となります。
建物(土地)明渡しに関する当事務所の弁護士費用
建物(土地)明渡しに関する当事務所の弁護士費用は、以下のリンクよりご確認いただけます。
https://ibarakiasahilaw.com/service/realestate/#anc-price
おわりに
本コラムでは、賃料滞納者を強制退去させる方法とその費用を解説しました。
家賃滞納者をいち早く追い出し、新たな借主から賃料の回収を行うためには、正確かつ迅速に明渡し請求の手続きを進める必要があります。
賃料滞納に関してお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。
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記事監修者 : 茨木あさひ法律事務所
代表弁護士谷井 光
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弁護士登録後、都内の総合法律事務所で経験を積み、茨木あさひ法律事務所を創業。相続、交通事故、労働問題が得意分野。趣味は、ゴルフ、サウナ。立命館大学経営学部卒業、神戸大学法科大学院修了。
保有資格・弁護士(大阪弁護士会所属:登録番号62348)
・宅地建物取引士